演劇でしか表現できない面白さを追及する劇団 絶対安全ピン

Sunday Morning ~ごあいさつに代えて

公演というものは、本当に多くの人の力に支えられている。
そのため芝居の当日パンフレットには「スペシャルサンクス」の欄がある。
作品になんらかの形で関わった方々に感謝をささげる、神聖なスペースである。
しかし、わがままで恩知らずの演劇人が、どこまで本気で感謝しているか、お客様は疑ってかかられた方がよい。
感謝を表明して日頃の迷惑を許してもらおうというアリバイか、でなければ、
「こんなに大勢の人間を動かしちゃったもんね」という密かな自慢である。

さて、この当日パンフのスペシャルサンクスの欄を見ると、「荻窪ハートレス」の名前が掲載されている。名前だけでは人なのか、なんなのか、分からない。
「荻窪ハートレス」は、当劇団関係者が所属している、フットサルのチームである。
この芝居はフットサルを題材にしているのだが、作者が全くフットサルに無知なので、取材をさせていただいたのである。取材といっても、試合を見学させてもらっただけであるが。

試合はよく晴れた日曜の朝に行われた。職場の仲間や地元の仲間を集めて、大の男たちが、大きくもないフットサルコートに集まって、ボールを追っていた。
初めて見るそれは不思議な光景だった。これは学校の部活でもなく、もちろんプロでもない。誰にも強制されないのに、子供がいてもおかしくない年齢の男たちが、日曜の朝にこれだけ集まるというのは、どういうことだ。これが普通の日本、普通の東京か。
・・・といいつつ本当は不思議でもなんでもないのである。現に自分は同じようなことをやっている。フットサルコートに集まるか、稽古場に集まるかの違いだけじゃないか。これ以上は馬鹿らしいので言う気にもなれない。
取材というものは他者を発見しに行くものである。私は他者と出会おうとして、うっかり自分と出会ってしまった。この取材は失敗である。

小学生の頃、クラスの男子の半数は、地元の少年野球団に所属していた。私は何度誘われても、入団することを断っていた。練習が日曜の朝で、日曜の朝は観たいテレビがたくさんあったからである。あんなに観たかったテレビも今はほとんど観ない。
日曜の朝に、やりたいことが、ある。
それは、幸福なことなのか、どうなのか。

その謎を解明しようと思い、この芝居を作った。
でもそれは謎でもなんでもないのかもしれない。

絶対安全ピン 黒田圭