演劇でしか表現できない面白さを追及する劇団 絶対安全ピン

音響から  ご挨拶

これまで「演出家あいさつ」など一度も書いたことない私だが、今回は音響にもクレジットされているので、音響としてなら、ひとこと書いた方がいいと思われた。そういう芝居なのである。というわけで、不慣れな筆をとってみた。

といっても、いつも演出をやる時だって、劇中に使う音楽は考えてはいるのだ。そして、そんな時の私は、とてもクールである。自分が普段聴いてる音楽の趣味なんかにはこだわらない。あくまでも劇中の効果のみを考えて、きらいなジャンルの曲だって平気で使う。そうだ、演出家とはそういう人間であらねばならない。

ところが、今回の作品はその冷ややかな演出家の威厳が、まるつぶれの状態である。ここぞという場面の選曲は、まちがいなく自分の好みと趣味に走っている。いい恥さらしである。

せめて、好みだけではなく、なにか「縛り」を作ろうとして、タイトルどおり「ブリティッシュのロック」だけでいこうというプランを立てた。まちがってもアメリカ人のロックは使うまい、と。ところが、意外とこれも趣味に合っているのだ。ていうか、いつも聴いてるし。

どうしてくれよう。

イギリス人は通勤・通学の際に同僚や知人と会っても、話しかけたりしないそうだ。なぜなら、朝というのは一日の始まりの大事な時間で、それぞれが考え事をしている「個人の時間帯」なので、その領域を侵さないようにするのがエチケットであるからだ。訪英したことないので真偽は明らかじゃないが、その習慣に私は深く賛同する。紳士とはそういうものではないか。

私も小学校の時から、友人と登校するのが妙に嫌いだった。昔から私は紳士だった。たぶん私はイギリス人なのだと思う。スラリと長身だし、鼻も高いし。だとしたらこれは成るべくして成った作品である。出てくる人物は、たぶんみんなイギリス人である。きっとみなさんの何割かもブリティッシュにちがいない。

絶対安全ピン 黒田圭